1.先天異常と歯科での対応
頭部、顎、顔面と口腔領域には多くの先天異常が見られ、出生直後にその外見的特徴からさまざまな疾患や症候群として診断されました。しかし、最近では出生前でも遺伝的検査法や画像診断法などの進歩によって、胎生期に先天異常と診断されて治療が開始されたり、先天異常に対しての治療やケアプログラムを出生前から準備しておいて、出生直後から開始したりすることも可能な時代になってきています。
歯科医療に関係が深く、歯科診療所や病院の歯科、口腔外科、小児科などで対応する機会の多い先天異常には次のようなものがあります。
2.歯に対する先天異常
1)先天歯
歯に関する先天異常としては、先天歯(出生時に既に歯が生えている場合)と新生歯(新生児期に生えてくる歯)があります。多くは下顎乳前歯が早く生えてきたものですが、新生児では舌の下面(腹側)に潰瘍ができたり、母親の乳首が傷ついたりすることがあるため、歯科を受診したり紹介されたりして、指導や治療を受けます。
2)歯数の異常
智歯は人のなかでも最も先天性欠如(先天的な歯の欠如)の頻度が高いため、通常は生えてこなくても歯数の異常とはされません。その他の歯種で生えてくるのが遅い場合には、先天性あるいは後天性の原因で歯が形成されなかった場合と萌出障害の場合があります。
少数の歯の先天性欠如は人口の数パーセントに見られ、上顎よりも下顎に多く、また側切歯と第二小臼歯に多いとされています。
一方、多数の歯が先天的に欠如している場合(少歯症)には、何らかの、全身的な疾患と関係している症候性の異常と考えられます。
3.舌の異常
先天性の舌の異常では、舌強直症が多く見られます。これは舌小帯舌(舌の下面正中にあるヒダ)が太く短いために、舌が歯列の前や口腔外まで突き出せない状態になっているため、構音障害を伴うことが多くあります。口腔機能に障害のある場合には、口腔外科や小児歯科などで舌小帯の切除、延長手術が行われます。
4.口唇・口蓋裂
口腔領域で最も多い先天異常は、口唇・口蓋裂です。日本人では約600人に1人の頻度で現れます。口唇・口蓋列だけでほかに先天異常を伴わないもの(非症候性/散発性)が7割とされており、残りの3割は症候群のものです。
口唇・口蓋裂のために哺乳障害のある新生児の場合には、歯科医師が、上顎の印象を採ってホッツ床と呼ばれる装置を作製し、装着させます。この装置は口腔と鼻腔の間に隔壁となって、授乳時の哺乳障害・呼吸障害を改善します。口唇裂の一次手術を生後3ヶ月以降、体重5kgくらいを目安に行い、その後で口蓋裂の形成手術を行います。歯の萌出管理、う蝕の予防、言語治療、歯列不正と不正咬合の治療をはじめ、補綴治療も必要になります。また口唇・口蓋裂の患者では、口唇や口蓋の修正手術、矯正歯科治療や補綴治療など歯科医療とは一生の付き合いになります。
5.口腔領域のその他の先天異常
口腔領域ではそのほかにも多くの先天異常が見られますが、症候群のものは医科との連携で診断や治療が行われます。口腔領域の先天異常と形成不全は、口腔外科での手術対象になったり、歯科矯正や補綴治療、口腔機能リハビリテーションの対象になるため、病院の歯科や歯科診療所を訪れることがあります。
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