【はじめに】
矯正臨床の診断、治療方針の決定、矯正力の負荷など、一連の過程は、何らかの科学的根拠、すなわちエビデンスに基づいて行われるはずです。しかし、この根拠と言う言葉の意味を理解すればするほど、これらの難しさを知ることとなります。日常私たちは診断治療方針、治療術式の科学的根拠を探ることなく、経験豊富で、腕の立つ上手な先達の指導、助言に従って、矯正治療を進めているのではないでしょうか?
エビデンスという言葉を使うからには、科学的に証明できる必要があります。
診断の根拠は?治療方針の根拠は?治療術式の根拠は?と、問われても、残念ながら、確たる自信を持って答えることは現状ではできそうにありません。
【セファロメトリックスと矯正診断、治療方針】
Simonの人類学的正常の概念に基づいた顎態診断法が発表されて以来、いろいろな手法が人類学的分析に用いられてきました。1930年代にBroadbentとHogarthにより開発された頭部エックス線規格写真法は、矯正学の分野では日常的に利用されています。
Downs, Wylie, Graber, Coben, Ricketts, Jarabak,MeNamara, Sassouni, Tweed, Witsなど多くの分析法が発表されています。矯正医は、治療を必要とする患者の頭蓋顎顔面形題を、使い慣れた分析法を用い、適応する計測項目の平均値や標準偏差を通して評価し、治療計画に反映させています。
しかし、たとえば、ある計測項目が、1S.D.平均値より大きな値を示したからといって、その値を平均値まで変化させたとしても、治療したことにはならなりません。頭部エックス線規格写真分析は、どの分析法から得られる計測値あるいは予測値をもってしても、患者個人の治療の目標値を示しうるものではありません。
Enlowは、頭蓋諸構造の互いに相対応する構造(Counter parts)を比較することにより,個々人の頭蓋構造上の調和の特徴を把握しうると考えました。この手法は、確かに、個体を構成する骨構造の調和の解析には有効ではあるが、矯正治療に必要な Denture pattermの解析には必ずしも適用できないように思われます。
【矯正治療と成長予測について】
矯正治療では、患者さんの顎顔面頭蓋の成長様相を把握することは重要です。これまでいくつかの手法が臨床に応用されてきています。たとえば,頸椎形状の成熟度と全身の成長変化、手根骨の骨化度と全身成長、拇指尺側種子骨化骨開始時と身長の最大思春期性成長時期などの相関から、ある程度の確度をもって思春期性成長スパートの時期の予測は可能です。しかし、個体差、環境要因などにより、かなりのバラツキはみられます。個人の形態変化の予測には、成長量、タイミング、成長方向が絡んできて、個々の症例でそれらをいくつかのパラメーターから評価することはたいへん難しいです。たとえば、下顎骨の長さの成長変化を、下顎頭の形状、顎角部の形状、下顎下縁平面角,下顎枝の長さなどとの関係から評価しようとしても、必ずしも的確な結果は得られません。
現在のところ、セファログラムからデータを採取することは可能であっても、それらを解釈するには経験を必要とし、技術的なものも求められ、現時点では、かなりの確度をもって、科学的に成長を予測することは、難しいように思われます。
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